「電子書籍は紙の本より記憶に残りにくい」という意見を、読書好きの間で耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。筆者自身、電子書籍で読み終えた本の内容を、しばらく経ってから思い出そうとしても、紙で読んだ本ほどはっきり思い出せないと感じた経験があります。この記事では、そう言われる理由を整理したうえで、実際に試して効果を感じた「内容を覚えておきやすくする工夫」を紹介します。
なぜ「電子書籍は記憶に残りにくい」と言われるのか
ページの物理的な位置情報がない
紙の本を読んでいると、「あのエピソードは本の前半、右側のページの上の方に書かれていた」というように、内容と物理的な位置がセットで記憶に残ることがあります。電子書籍は画面をスクロールまたはタップして読み進めるため、こうした位置の手がかりが得づらく、内容だけを純粋に記憶する必要が出てきます。この違いが、「思い出しにくさ」の感じ方に影響していると考えられます。多くのアプリには進捗を示すパーセンテージやページ番号の表示機能がありますが、紙の本のように「あと指2本分で読み終わる」といった感覚的な把握とは違い、数字を見て初めて残りの分量を意識する形になるため、無意識のうちに得ていた位置の手がかりが減ってしまうのも自然なことなのかもしれません。
「読み終えた」という達成感の得づらさ
紙の本は、読み進めるにつれて残りページの厚みが薄くなっていく様子を目や手で感じられ、読了時には本を閉じるという明確な区切りの動作があります。電子書籍は画面の中で進捗が数字やバーで表示されるだけで、こうした身体的な達成感を得にくい面があります。達成感の薄さが、読んだ内容の印象の残り方にも影響している可能性があります。
ながら読みしやすい環境そのものの問題
スマートフォンで読んでいると、通知が来てSNSを確認したり、他のアプリに気を取られたりと、読書に完全に集中しきれない場面が増えがちです。これは電子書籍というフォーマット自体の問題というより、スマートフォンという端末の性質による面が大きいのですが、結果として内容が記憶に残りにくいと感じる一因になっていると考えられます。
筆者自身が感じた「内容を思い出しにくい」体験
以前、通勤中にスマートフォンでビジネス書を読み進めていたとき、半年後に同僚との会話でその本の内容が話題になった際、「読んだはずなのに具体的な内容がほとんど思い出せない」という経験をしたことがあります。一方で、同じ時期に紙で読んだ小説の印象的な場面は、今でも比較的はっきり覚えています。この違いを振り返ってみると、単に読んだ媒体の違いだけでなく、「電車の中で細切れに読んでいた」「他のことを考えながら読んでいた」という読み方そのものの違いも大きく影響していたのではないかと感じています。試しに、同じビジネス書のジャンルを、今度は自宅でスマートフォンの通知をオフにし、腰を据えて電子書籍で読んでみたところ、以前よりも内容をはっきり覚えていられたことも印象的でした。この経験から、「電子書籍だから記憶に残らない」というより、「電子書籍だとながら読みになりやすい読み方をしてしまっている」ことの方が、記憶への残りやすさに影響している部分が大きいのではないかと考えるようになりました。
実際に試して効果を感じた工夫
気になった箇所にマーカーを引く
多くの電子書籍アプリには、紙の本の蛍光ペンのように文章にマーカーを引ける機能があります。印象に残った一文や、後で見返したい箇所にマーカーを引く習慣をつけてから、読み終えた後にマーカー部分だけを見返すことで、内容を思い出すきっかけを作れるようになりました。
章の区切りで内容を振り返る
1章読み終えるごとに、数十秒でよいので「今の章で何が印象に残ったか」を頭の中で振り返るようにしています。細切れに読むことが多い電子書籍だからこそ、こうした小さな振り返りのタイミングを意識的に作ることが、記憶の定着に役立っていると感じています。
読了後に一言メモを残す
読み終えた本について、感想を長々と書く必要はなく、「この本で一番印象に残ったのは○○」という一文だけをメモアプリに残すようにしています。後からそのメモを見返すだけで、本の内容をある程度思い出せるようになり、「読んだのに何も覚えていない」という感覚がかなり減りました。半年ほど続けてみて、メモの一覧がそのまま自分だけの読書記録になっていることにも気づきました。読んだ本のタイトルだけが並んだリストよりも、一言でも感想が添えられている方が、その本を読んでいた時期の自分の気持ちまで思い出せるようになり、記憶の手がかりとしての効果を実感しています。
紙とのハイブリッド読書を意識する
じっくり内容を記憶しておきたい本(仕事に関わる専門書など)は紙で読み、気軽に楽しみたい本は電子で読む、というように使い分けることも、記憶に残したい度合いに応じた選択として有効です。すべてを電子書籍に統一しようとせず、目的によって媒体を選ぶという発想が、結果的に自分の読書体験全体の満足度を高めてくれると感じています。
「記憶に残る読書」を目的にしすぎない考え方
ここまで記憶に残す工夫を紹介してきましたが、そもそもすべての読書が記憶に残る必要はない、という考え方も大切だと思います。気軽に楽しむための読書もあれば、じっくり記憶に刻みたい読書もあり、その両方があってよいはずです。「覚えていなければ意味がない」と気負いすぎると、かえって読書そのものが楽しめなくなってしまいます。通勤中に軽い気持ちで読んでいるコミックや娯楽小説にまで「内容をしっかり覚えなければ」というプレッシャーをかけてしまうと、リラックスするための読書時間が、逆に負担の大きい時間に変わってしまいかねません。記憶に残したい本には工夫を、気軽に楽しみたい本にはそのままの読み方を、というように、本の性質に応じて向き合い方を変えるくらいの気持ちで十分ではないでしょうか。
読み終えた本を人に説明できるかで確認する
内容が記憶に残っているかどうかを確認する簡単な方法として、読み終えた本の内容を誰かに一言で説明できるかを試す、という工夫も取り入れています。「どんな話だった?」と聞かれたときに、あらすじを一文でまとめられなければ、それは内容が十分に整理されないまま読み終えてしまっている合図だと捉えるようにしています。実際に家族に「最近読んだ本、面白かった?」と聞かれた際にうまく説明できなかった経験から、この確認方法を意識するようになりました。誰かに話す前提で読むと、自然と要点を意識しながら読み進めるようになり、結果的に内容の整理がしやすくなったと感じています。
よくある質問
電子書籍のマーカー機能は、後から見返しやすいですか?
多くのアプリでは、マーカーを引いた箇所だけを一覧で表示する機能があります。読み終えた直後だけでなく、数か月後にふと見返したいときにも、本文全体を読み直さずに要点だけを確認できるため便利です。
オーディオブック(耳で聴く読書)は記憶に残りやすいですか?
感じ方には個人差がありますが、聴きながら他の作業をしていると内容が記憶に残りにくいと感じる人もいれば、繰り返し聴くことでかえって定着しやすいと感じる人もいます。自分がどちらのタイプかを試しながら見極めるとよいでしょう。
電子書籍の文字を音声で読み上げてもらいながら目でも追うと、記憶に残りやすくなりますか?
目と耳の両方から情報を得る読み方は、集中しやすいと感じる人もいます。ただし、読み上げの速度が自分の読むペースと合わないと、かえって内容が頭に入りにくくなることもあるため、まずは短い章で試してみて、自分に合うかどうかを確認してから習慣にするとよいでしょう。
まとめ
電子書籍が記憶に残りにくいと感じる背景には、ページの位置情報のなさや達成感の薄さ、ながら読みのしやすさなど、複数の要因が関係しています。マーカーの活用、章ごとの振り返り、読了後のひとことメモといった工夫を取り入れることで、記憶への残りやすさは変えられます。すべての読書に同じ工夫を求めるのではなく、本の性質や目的に応じて読み方を選んでいくことをおすすめします。「記憶に残らないから電子書籍はやめよう」と結論を急ぐのではなく、読み方を少し変えるだけで印象の残り方は変わるということを、まずは試してみてほしいと思います。

